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心房細動の発作を心配せず、日々の生活を健やかに過ごすために

心房細動を克服するためのホームページ

心房細動を克服するために

 このホームページをご覧になっている方は、恐らくすでに不整脈等でお悩みの方々であるとお察しします。

 心房細動は、超高齢化社会にともない患者数が急増しているにもかかわらず、その治療法は今でも、「薬を飲み続けてうまくコントロールする」ことに主眼が置かれ「根本的に治す」治療へ踏むこみ切れていない医療者が多いことに、もどかしさを感じます。

 医療側が手をこまねいている状態ですから、患者さんに根本的な治療の重要性が伝わるはずがありません。

 心房細動についてより理解を深めて、治療をより前向きに考えるきっかけになるよう、できるだけ平易な言葉で、病気や治療の説明をしていきます。

 心房細動を治療する手段としては、薬物療法非薬物療法があります。今までは、あまりにも薬物療法に主眼が置かれてきました。もちろん、薬物療法を否定しているのではありません。

 近年、カテーテルアブレーションの治療技術が目覚ましく発展していることを考えると、この治療方法を皆さんにもっと詳しく知ってもらい、治療の選択肢の一つとして考えて頂きたいと思います。

 「カテーテル治療はなんだかよくわからない、こわい」という漠然とした疑問や不安が少しでも払拭されることで治療の選択肢が増えます。

 心臓の状態は一人ひとり違い、心房細動の症状も多岐にわたります。決してマニュアル通りに治療が行えるわけではなく、ときには予期せぬ事態に直面することもありますので、どのような状況下でも常に冷静に、最も良い結果が得られるよう努力を重ねている医療者を選ばなければなりません。

 長期間心房細動を患っていても、高齢の人でも、病歴が長いから、もう歳だから、合併症が心配だから、と諦めずにまずは医師に相談してください。
 そこからより良い人生への新たな一歩が踏み出せる可能性は十分にあります。

 私自身も長年に渡り脈拍の乱れが生じる不整脈(心房細動)の不安と向き合ってきた経緯があります。2020年10月に心臓カテーテルアブレーションを受け、今では期外収縮も感じることなく健康を取り戻すことができました。

 この度、私の主治医である東京ハートリズムクリニックの桑原院長の許可を頂き、私自身がアブレーションを受けるキッカケになった著書【発作ゼロ・再発ゼロをめざす「心房細動」治療】に沿った内容を、経験に基づく情報や最新ニュースを交えながら皆様と共有するためにこのホームページを立ち上げました。

 最終的にめざすべきところは、心房細動の人が日々をできるだけ快適に、重篤な疾患のリスクにおびえることなく、その人らしい生き方で長く生きられることだと思っています。

 発作を心配せず、日々の生活を健やかに過ごせるよう、このホームページがひとりでも多くの方々の一助になることを願ってやみません。

正常な心臓の働きと電気の流れ 洞結節|房室結節

 心臓は筋肉が収縮と弛緩を繰り返し、血液を体全身に送り出す臓器です。正常の人ならば、その量は5~6ℓ/分です。

 心臓は上下2つの部屋に分かれており、上の部屋を心房、下の部屋を心室と呼びます。また、心房と心室も左右2つに分かれており、それぞれを右心房左心房右心室左心室と呼んでいます。体全身に血液を送り出すのは、左心室の役割です。

 心臓の筋肉は、電気の刺激により興奮します。右心房の上のほうには、心拍動の命令を出す洞結節(下図参照)という組織があり、安静時で、1分間に50~100回の電気刺激を規則正しく発生しています。

 この組織は、脳からの刺激がなくても、自ら一定のリズムで規則正しく興奮するようなシステムを備えています。環境が整えば、心臓だけが取り出されたとしても、この洞結節の刺激により心臓は拍動を続けます。

 洞結節で発生した電気は、心房の中を広がり、房室結節(下図参照)に到達します。心房の中では電気は秒速0.5mで流れていきますが、房室結節では、極端に遅くなり、秒速0.05mまで低下します。

 ちなみに、この房室結節は、日本人の田原淳博士が、100年以上前に世界で初めてその構造を発表したものだそうです。

 心房心室の電気的な連結は、一般にはこの房室結節のみです。房室結節を通過した電気は、心室の刺激伝導系(下図参照)という特殊な心筋に到達します。

 ここでは、電気は秒速5mという高速で駆けぬけて、心室の各所に伝わり、心臓は全体として、調和しながら収縮していきます。
 これが正常な脈拍のときの心臓の中の電気の流れです。

心臓の中の電気の流れ

心臓の中の電気の流れ
出所:東京ハートリズムクリニック

心房細動とはどういう不整脈なのか 「元気で長生き」を阻む心房細動

 心房細動とは、脈拍が完全に不規則になってしまう不整脈のことです。治療が必要な不整脈の中で最も多く、正常の脈拍(洞調律)と比較して、脳梗塞になるリスクが高くなります。次に心電図モニター(上が洞調律、下が心房細動)を示します。(下図参照)

 洞調律時の心房の興奮を示す波をP波、心室の興奮を示す波をQRS波といい、この2つはセットとなって規則正しい感覚で出現しています。このQRS波が出現する際に、血液が全身に送り出されており、脈拍として感じます。

 心房細動のモニターでは、P波と呼ばれる部分が消失し、細かく揺れています。これを細動波といいます。そして、各QRS波の出現の規則性は失われ、脈拍も完全に不規則になってしまいます。

心電図モニター(洞調律と心房細動)

心電図モニター
出所:東京ハートリズムクリニック

心房細動はいくつかに分類できる 発作性|持続性|慢性

 心房細動は出現様式により、次のように分類されます。

分類 心房細動の出現様式
発作性 心房細動は発作的に出現し、発作は1週間以内自然に治まる
持続性 出現した心房細動は自然に停止せず、持続期間が1週間以上続く
慢性 心房細動は常に持続しており、その持続期間が1年以上のもの

心房細動はなぜ発症するのか 心房細動の起源と基質

 心房細動は、次のどちらか、もしくは両方が存在することによって発症、持続します。

心房細動起源
 1分間に500~600回という高頻度で興奮する異常な心房筋のことです。これが他の心房を高頻度に興奮させることにより心房細動を引き起こします。

心房細動基質
 一旦始まった心房細動が停止せずに持続する心房の電気的特徴のことです。正常の心房筋は、洞結節の電気刺激をスムーズに、素早く、心房全体に伝えます。

 しかし、その心房筋に痛みが生じると、心房の中で電気刺激が、ゆっくり進んだり、回転したりするようになります。

 そうなると、一旦生じた心房細動は持続しやすくなります。そういうゆっくり進んだり、回転したりする性質のことを心房細動基質といいます。

心房細動の起源基質
心房細動の起源と基質
出所:東京ハートリズムクリニック

 上記で述べた分類では、発作性、持続性、慢性心房細動のすべてにおいて、心房細動起源と心房細動基質の両者とも存在しえます。

 しかし、発作性心房細動では心房細動起源が大きく関与し、持続性、慢性心房細動では、心房細動罹患期間が長くなるほど、心房細動基質の関与が大きくなります。

存在可能性 発作の種別 関与の度合
起源+基質 発作性 起源
持続性 基質
慢性

心房細動時の電気の流れ

 心房細動中、1分間に500~600回も興奮する心房細動起源は、心房の中でとして存在します。1個の心筋細胞なのか、複数の心筋細胞が集まっているかは不明ですが、数mm以下の点として存在します。この心房細動起源は、他の心房も高頻度に興奮させます。

 しかし、興奮させられるほうの心房は、心房細動起源と同じような頻度では興奮できず、200~300回/分程度の興奮状態です。このように興奮頻度が少なく伝導することを、専門用語で減衰伝導といいます。

 頻度が200~300回/分の心房興奮は、最終的には、房室結節に到達します。房室結節では、電気興奮の伝播速度が極めて遅いので、かなりの心房興奮が打ち消され、結果的に心室に伝わる際は、100~200回/分の電気興奮まで落ちています。

 つまり、500~600回/分の興奮も、心室に到達する際には、100~200回/分の興奮頻度に落ちているということです。

心房細動時の電気の流れ
心房細動時の電気の流れ
出所:東京ハートリズムクリニック

 生物学的に考えて、心筋の塊である心室が、心房細動起源と同じように500~600回/分で興奮していたら、あっという間に心臓は疲弊し、動きを止めてしまうでしょう。心臓の中には、そうならないためのシステム(減衰伝導房室結節での電動速度の低下など)が備わっています。

 神がそういうシステムを作ったのか、そういうシステムを持っている人類のみが生きながらえたのか。人体の神秘に畏敬(いけい)の念を抱かざるをえません。

日本の心房細動患者人口は170万人

 次のグラフは、2005年から2050年までの日本における心房細動患者数の予測を表したものです。2003年に日本全国で実施された健康診断の結果より推定されたもので、解析対象者数が63万人と多いので、かなり信頼性の高いものと思われます。

日本における心房細動患者数の経年変化
日本における心房細動患者数の経年変化
出所:東京ハートリズムクリニック

 このグラフから推定すると、2021年 現在では、心房細動患者数はおよそ100万人です。

 ただし、この研究で拾い上げられた心房細動とは、健康診断の際に心電図が心房細動を示していたもののみで、そのほとんどは、持続性、慢性、心房細動であり、発作性心房細動は含まれていません。

心房細動を引き起こす三大原因 加齢|高血圧・心臓病|飲酒 

 心房細動の3大原因は「加齢」「高血圧心臓病」「飲酒」です。その他の原因として、甲状腺機能亢進症睡眠時無呼吸症候群等があります。以下にそれぞれの心房細動との関係について説明します。

①加齢と変性の関係

 自然なことですが、人は歳をとると体のあちこちがくたびれてきます。

 心臓も同じです。成人の心臓は1日平均で10万回拍動しています。小児期には、さらに拍動回数は多くなります。80歳の方では、生まれてから少なくとも30億回拍動を続けてきたことになります。30億回という途方もない仕事量ですから疲弊するのも当然です。

 ものは疲弊すると、傷みます。傷むということは、姿を変える(変性)ということです。変性すると、今までになかったような、異常な現象を引き起こすことがあります。この異常な現象の一つが、心房細動のメカニズムで述べた、心房筋が高頻度興奮することです。

 つまり、加齢により心房細動起源が作られ、また、変性により、心房細動のメカニズムのところで述べた、心房細動基質も作られてしまいます。

加齢と変性
50歳代 60歳代 70歳代 80歳代
1% 2% 3% 4%

 日本で行われた疫学調査では、50歳代、60歳代、70歳代、80歳代で、心房細動有病率は、おおよそ1%、2%、3%、4%と、年齢とともに増加していくことが分かっています。


②高血圧と心臓病の関係  

 高血圧は心臓にストレスをかけ、心房細動の直接の原因となります。
 また、同時に狭心症、心筋梗塞の原因にもなり、これらの疾患を介して心房細動の間接的な原因にもなります

 心房細動患者の実に6割は高血圧を有している
と言われています。

 また、僧帽弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症、肥大型心筋症、先天性心疾患も心臓へ負担をかけるので、心房細動を引き起こすと考えられています。


③飲酒と心房細動の関係  

 大酒飲み(多量飲酒家)の実に60%は心房細動を発症します。アルコールを摂り過ぎた週末やその後に、心房細動を起こすことが多いので、そのような心房細動発作はホリデーハート症候群と呼ばれます。

ホリデーハート症候群
飲酒(ホリデーハート症候群)

 多量飲酒と節度ある飲酒の目安

 実際、カテーテルアブレーションを受ける人の約半数が飲酒家です。そのうちの半分は、現在もしくは若いころ多量飲酒家だったという人です。

 ではどの程度飲むと「多量飲酒」に該当するかというと、1回の飲酒でアルコールを3単位以上飲む人のことを言います。

 節度ある飲酒とは、アルコール1単位です。たとえ連日飲酒したとしても、この程度ならば、心房細動も含めて、アルコールによる健康被害はまぬがれます。

お酒1単位の目安
ビール 中びん1本 500ml
日本酒 1合 180ml
焼酎 0.6合 110ml
ウイスキー ダブル1杯  60ml
ワイン 1/4本 180ml
缶チューハイ ロング1缶 500ml
(純アルコールにして20g)

節度ある飲酒の目安(アルコール1単位)
節度ある飲酒の目安

心房細動のその他の原因 甲状腺機能亢進症|睡眠時無呼吸症候群|遺伝的要因

④甲状腺機能亢進症

 甲状腺機能亢進症にともなう心房細動の場合は、まず甲状腺機能亢進症の治療を行わないと心房細動は治りません。

 しかしながら、実際には甲状腺機能亢進症の治療を行い、甲状腺ホルモンが正常化しても、心房細動はそのまま残存し、慢性化することが多々あります。

 その場合、カテーテルアブレーションが有効な治療手段となります。

甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症


⑤睡眠時無呼吸症候群(いびきと心房細動の関係)

 原因は様々ありますが、多くは肥満のために、睡眠中、舌根が沈下し気道を閉塞して呼吸が停止してしまいます。

 痩せている人でもなることはあり、特に飲酒後の就寝中に睡眠時無呼吸を引き起こすことがあります。

 無呼吸中の低酸素血症が、心臓に負担をかけ心房細動になるといわれています。

 治療としては、痩せることも効果はありますが、睡眠中にとりつける簡易型人工呼吸器(CPAP)での治療が有効です。

睡眠時無呼吸症候群とCPAP
睡眠時無呼吸症候群とCPAP


⑥遺伝的要因

 一般的に心房細動そのものは遺伝しません。しかし、1親等以内に心房細動患者がいると、その人が心房細動になる可能性は、そうでない人に比べて1.4倍高いといわれています。

 その理由は、心房細動の原因となりうる、高血圧、糖尿病、肥満などの遺伝や食生活などの生活習慣による影響とも考えられます。

生活習慣病の原因
生活習慣病の原因

カフェインは心房細動を引き起こすか

 カフェインを摂りすぎると、動悸や心房細動を含めて不整脈を引き起こします。しかし、通常量の摂取量(100~300mg/日 ドリップ式コーヒーで1~3杯/日)では、心房細動を引き起こすことはありません。

心房細動の三大症状 動悸|息切れ|めまい

 心房細動による三大症状は、「動悸」「息切れ」「めまい」です。

心房細動による三大症状
心房細動による三大症状(動悸・息切れ・めまい)

 心房細動になると、心拍の規則性が完全に失われてしまいます。そして、病初期には、心拍の速さは一般的に速くなります。

 ちなみに、心拍数とは、心臓が拍動する回数のことで、脈拍数とは、血管が拍動する回数のことです。洞調律の人は、この両者は一致します。

 しかし、心房細動の多くの人は一致せず、心拍数の方が脈拍数より多くなります。心房細動で脈拍数が100拍/分の人は、心拍数はそれ以上の120~150拍/分になっています。

 また、心拍数が早くなると心臓は疲弊し、そのうち収縮する機能が低下します。運動しても、体が必要とするだけの血液を送り出すことができず「息切れ」を自覚します。
 それまで何ともなかった坂道や階段が息苦しくて、一気に上がれなくなります。

 そして、心房細動の人は、洞不全症候群といって、脈拍が遅くなる病気も持ち合わせいることがあります。そういう人は、心房細動が停止した際に、洞結節が働き出すのが遅れ、5~10秒程度、心拍数が停止します。

 その間、血液は脳に運ばれないので「めまい」を自覚します。ひどい場合には失神することがあります。

洞不全症候群 心房筋・洞結節の変性

 洞とは洞結節のことで、正常の心拍動を始める司令塔です。その司令塔の働きが弱った状態が洞不全症候群です。

 心房細動が停止した際に、司令塔(洞結節)がすぐに働けば、何の問題も生じませんが、この洞結節が傷んでいると、再び働き始めるタイミングが遅れてしまいます。

 この遅れが数秒以内ならば症状を自覚することはありませんが、5~10秒ともなると、脳に血液が運ばれない時間が長くなり、失神したり、倒れかけたりします。

 心房細動は心拍数が早くなる不整脈で、洞不全症候群は心拍が遅くなる病気です。

 しかし、この2つの不整脈の原因は同じです。それは、心房筋が傷んでいる(変性)ということです。これにより、心房細動起源が発生したり、心房細動基質がつくられたりしますが、同時に洞結節も変性を来し、その機能が落ちてしまっていることが多いのです。

 洞不全症候群を合併した心房細動の方は、抗不整脈薬を内服する際に注意することがあります。
 
 抗不整脈薬とは、心房細動を起こさないようにする薬のことですが、同時に、洞結節の機能も落とすため、心房細動が停止した後の心停止時間をさらに延長させてしまいます。

 薬を内服する前は、心停止時間が1~2秒で何ともなかった人が、薬を内服したことにより、もっと長くなり、失神することがあるのです。

 担当医も、心房細動の裏に潜むこの洞不全症候群に気づかず、抗不整脈薬を投与してしまうことがあります。

 抗不整脈薬を内服して、「めまい」の症状がさらに悪化するような方は、担当医に速やかに伝えるようにしてください。

無症候性心房細動 自己検脈の重要性

 心房細動を患っていいても、日頃は無症状の人もいます。これを「無症候性心房細動」といいます。 心房細動患者全体から見ると、40%の人はこれに該当します。
そういう方は、検診時の心電図検査で偶然、心房細動を指摘され、病院での再検査を勧められます。

 無症候性といっても、脳梗塞を発症するリスクがあるのは症状のある方と同じです。なので、適応基準を満たせば、抗凝固薬を内服した方が賢明です。

 なお、無症候性の心房細動に気づくためには「自己検脈」が非常に重要です。自己検脈とは、自分で脈拍をチェックすることで、手首の外側の橈骨動脈が、脈拍を蝕知しやすい部位なので、反対側の指2~3本で蝕知すると拍動が分かりやすいです。心房細動になると、脈拍の規則性が完全に失われます。

脈拍のとり方

予兆がある場合もある 心房性期外収縮

 心房細動は、それまで何ともなかった人に突然起こることもありますが、中には予兆となる不整脈がおこることもあります。それを「心房性期外収縮」といいます。

 心房性期外収縮とは、予定された脈拍よりも早いタイミングで出現する不整脈です。「胸がドキッと飛ぶ」「胸が踊る」「咳が出る」などの症状を自覚します。

 心房性期外収縮と心房細動の発症メカニズムは類似していて、変性などによって生じた異常な心筋細胞が興奮することにより発症します。

 心房細動では異常心筋細胞の高頻度興奮が一定時間持続しますが、心房性期外収縮では、単回もしくは数回程度続くだけで、動悸も一瞬もしくは数秒間自覚するだけです。心房性期外収縮は、数が多いほど、将来心房細動になる可能性が高くなります。

心房細動 心房性期外収縮
異常心筋細胞の高頻度興奮が一定時間持続 異常心筋細胞の高頻度興奮が、単回もしくは数回程度続くだけで、動悸も一瞬もしくは数秒間自覚するだけ


 ホルター心電図検査で、1日700~800拍以上の人は、15年後に心房細動になる可能性が90%以上と報告されています。

 心房性期外収縮自体は、脳梗塞や心不全のリスクにはならない危険性の少ない不整脈です。なので、血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)の内服は不要です。

 ただし、心房性期外収縮でも症状が強い場合は、薬物治療もしくはカテーテルアブレーション治療の適応となります。

心房細動の予後 たどる経過と結末

 心房細動に罹患しても、全く症状を自覚しない人もいます。そうゆう人は、心房細動でも何も支障を来さないと思われています。
 しかし、心房細動を放置すると、将来、様々な病気を引き起こす可能性が高くなります。

心房細動になると死亡リスクが2倍に 合併疾患の危険性

 心房細動になると死亡リスクが2倍になります。リスクが2倍に上昇するというのは、100人の洞調律の人が、ある一定期間に5人亡くなったとすると、心房細動に罹患している人では、同じ期間に10人亡くなるということになります。
 
 ちなみに、ここでの死亡とは、合併疾患を含めたすべての原因による死亡のことです。心房細動の人の多くは、合併疾患を持ち合わせています。

 それは、うっ血性心不全、心筋梗塞、脳梗塞、高血圧、糖尿病などです。心房細動に罹患していても、現在何の症状もなく、生活の質も落ちていないとしても、長生きするためにも、心房細動は直しておくべきです。

心房細動が引き起こす重病 脳梗塞|認知症|心不全|心筋梗塞

①脳梗塞 

 心房細動が死亡のリスクを上げる最たる要因は脳梗塞です。脳梗塞が、直接、間接的に死亡の原因となります。

脳梗塞
脳梗塞

血栓ができる3つの要因

(1)血流うっ滞
(2)血管内皮障害(血管に傷がつくこと)
(3)血液凝固能亢進状態(先天的、後天的に血液が固まりやすい状態)

 この3つの要因の1つ以上が存在していると、血栓ができやすいといわれていて、その要因の数が重なるごとに、血栓のできやすさは上昇するといわれています。

 心房細動があるのに、抗凝固薬を内服していなくても、長期間、脳梗塞も起こさず平気な人がいます。それは、心房細動があっても、前記3つの要因のどれも、持ち合わせていないからです。しかし、残念ながら、多くの心房細動の人は最低でもどれか1つは存在しています。 

(1)血流うっ滞とは、心房内の血流速度が低下している状態をいいます。(経食道心エコー検査を受けるとで判る)そういう人に(2)血管内皮障害や(3)血液凝固能亢進状態が加わると、血栓はさらにできやすくなります。">
(2)血管内皮障害とは、老化そのものにより生じますし、手術などの医療行為によっても起こることがあります。なお、喫煙でも血管内皮は障害されます
(3)血液凝固能亢進状態は脱水等で生じます。

心房細動による脳梗塞の重症度

 心房細動による脳梗塞は重症化するといわれています。脳梗塞とは、脳を栄養する血管が閉塞し、脳が壊死におちいる病気です。その壊死の範囲により重症度が異なります。
 脳梗塞は血管の詰まり方で次の3タイプに分けられます。
(1)ラクナ脳梗塞(死亡率=0~1%)
(2)アテローム血栓性脳梗塞(死亡率=6%)
(3)心原性脳梗塞(死亡率=12%)

 心房細動によって引き起こされる脳梗塞は、上記(3)心原性脳梗塞です。この心原性脳梗塞には、全く予兆がなく、突然、発症します。それは心房でつくられた血栓が飛来し、突然血管を詰めてしまうからです。

 一般的に脳梗塞の重症度を比較すると次の通りです。

<脳梗塞の重症度>
心原性>アテローム血栓性>ラクナ


②認知症

 はっきりとした脳梗塞の既往のない人にでも、MRI検査をすると脳梗塞が見つかる場合があります。 これを無症候性脳梗塞」といいます。

 心房細動の方は、洞調律の人と比較して、この無症候性脳梗塞の頻度が2~3倍高いことが分かっています。心房細動と認知症の関係メカニズムは不明です。

 しかし、心房細動は血栓を生じやすいことや無症候性脳梗塞が多いことを考慮すると、長期間、微少血栓が少しずつ脳に飛び、小さい血栓ができて、徐々に脳機能が低下している可能性が高いと思われます。

認知症
認知症


③心不全 

 心房細動になると心不全の発症率が高まります。心不全とは、心臓の機能が低下し、体が必要とするだけの血液を送り出せず、息切れなどを自覚する状態のことです。すべての心疾患で、病状が悪化すると心不全になる可能性があります。

 心房細動を患っている人が心不全を発症するメカニズムにはいくつかあります。心房細動による早い心拍(頻拍)が続くと、心臓は疲弊し、心臓の機能が心臓の機能が徐々に低下し、心臓は拡大し、心不全を発症します。これは心房細動が原因で発症するタイプの心不全です。

心不全
心不全

 

 また、心臓全体にストレス(高血圧等)がかかり、最初に心房細動が出現し、そのうち心不全を発症する人もいます。これは心房細動と心不全の原因が同じタイプの心不全です。

 また逆に、心不全は心房細動の原因にもなります。多くの心不全では、心室のポンプ機能が低下していて、それが心房にも波及し、心房細動を発症することがあります。

 いずれにしても心房細動に心不全を合併すると、死亡率は急激に上昇します。この両者を合併したb場合は、それぞれ単独の治療よりも厳重な管理が必要となります。


④心筋梗塞 

 心房細動は心筋梗塞の発症率を1.5~2倍に上昇させます。心筋梗塞全体から見たら、その原因として心房細動を有している人は少ないです。

 ただし、心房細動を持っている人が急激に激しい胸痛を自覚した場合には、心房内にできた血栓が心臓を栄養する冠動脈を閉塞したということも、考慮する必要があります。

心筋梗塞
心筋梗塞

心房細動を克服するためのホームページ

心房細動を克服するためのホームページ https://www.secondopinion.link
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